
工場の省エネ活動において、生産ライン以外の照明や換気扇、空調といった設備の管理は、徹底が難しい領域の一つです。
「換気扇1台を止めたところで、大きな金額にはならない」「LED照明だから、つけっぱなしでも影響は少ない」
こうした費用対効果への視点に加え、「そもそも広い工場内に点在する100台、200台ものスイッチを、休憩のたびに人力で消して回ること自体が物理的に不可能」という課題があります。
本記事では、LoRa無線を用いたIoTシステム「FieldMagic(フィールドマジック)」を活用し、工場内の設備をまとめて遠隔操作することで、現場の業務負担を増やさずに省エネを図る手法について解説します。
※「チョコ止め」は設備保護のため、過度な頻度でのON/OFF(インチング)は推奨されません。「最小稼働時間」や「再始動禁止時間」を設定し、モーターの熱負荷規定やメーカー推奨頻度(例:1時間に数回程度まで)を遵守した安全な範囲内で制御を行う必要があります。
「数」と「時間」で膨れ上がる消費電力
1つ1つの消費電力が小さい照明やファンですが、工場全体で見るとその「稼働台数」と「稼働時間」は膨大です。 わずかな電力消費であっても、数百台規模で長時間積み重なることで、決して無視できないコストとなる可能性があります。
こまめな停止(チョコ止め)の対象設備例
| 設備カテゴリ | 具体的な機器例 | 運用のポイント |
| 照明設備 | 天井照明(水銀灯・LED)、通路照明、外灯 | 休憩時間や、作業のないエリアの消灯。照度センサーとの連動など。 |
| 換気設備 | 有圧換気扇、ルーフファン、送風機 | 熱や粉塵の発生がない時間帯(休憩中など)の停止。 |
| 空調設備 | スポットクーラー、パッケージエアコン | 人がいないタイミングでの停止。消し忘れ防止。 |
| その他 | 小型ポンプ、エアブロー、集塵機 | ライン停止との連動停止。 |
このような設備を、LoRa無線システムでグループ化し、一括制御できるようにするのが「FieldMagic」です。
稼働時間の適正化によるコスト削減効果
ムダな稼働を減らすことは、使用電力量(kWh)の削減だけでなく、基本料金を決定するデマンド値(kW)の抑制にもつながります。
以下のシミュレーターで、設備の稼働時間を短縮した場合の電気代削減効果をシミュレーションできます。
電力コスト削減シミュレーション
計算式:単価 × 消費電力 × 削減時間 × 台数 × 日数
1kWhあたりの単価
円
設備1台あたりの定格出力
kW
1日あたりの停止時間
h/日
合計台数
台
工場の稼働日数など
日
年間削減金額:
1,000,000
円
1台ごとの削減額は小さくても、工場全体で取り組むことで大きなコストメリットが生まれます。
無線を活用した「一括」遠隔操作
「FieldMagic」は、既存の制御盤などに後付けして、LoRa無線でのON/OFFを可能にする産業用のIoT機器です。設置時の配線工事を削減し、マグネットスイッチ等で動く設備を、現場に行かずにコントロールできるようになります。
FieldMagicの構成・設定例

休憩時間は「ワンタップ」で一斉停止
休憩開始のチャイムに合わせて、工場内の指定エリアの照明・換気扇・空調をボタン一つ(またはスケジュール設定)で一斉にOFFにします。 手動操作の手間を省くことで、物理的に不可能と放置されていた空運転の削減が見込めます。
復帰時は「順次起動」でピークを回避
作業再開時に全台が一斉に動き出すと、突入電流が重なりデマンド値(最大需要電力)が跳ね上がるリスクがあります。 FieldMagicのスケジュール機能を使えば、照明を点灯させた数秒後に換気扇を回す、といった「順次起動」が可能です。これにより、ブレーカー落ちや電圧低下のリスクを低減しながら復帰できます。
照明操作をトリガーにした自動制御
「照明のスイッチ」をトリガーとして、換気扇や空調を連動させることも可能です。「照明を消せば、そのエリアの空調も止まる」という動作を自動化することで、個別の操作を不要にし、消し忘れ防止に役立ちます。

無線制御で労務と電力を同時に削減
手動操作では限界があった省エネ活動も、適切なシステムを導入することで、継続的なコスト削減策としての運用が期待できます。
システムによる自動制御環境を整えることは、従業員の業務負担を減らすだけでなく、組織全体のエネルギー管理に対する意識を、自然な形で高めていけます。
配線工事の制約を受けにくい無線システムであれば、スモールスタートでの導入も容易です。まずは電力消費の大きい設備から遠隔操作化を進め、実際の電力データに基づいたコスト削減効果を検証してみてはいかがでしょうか。
FieldMagic(フィールドマジック)の製品詳細は以下よりご覧ください。

10km圏内の設備を無線で遠隔制御 – FieldMagic(フィールドマジック)
PLCや上位PC不要で設備を遠隔から操作・スケジュール設定。LoRa無線の遠隔設備制御システムFieldMagic(フィールドマジック)


