
工場建屋内の換気設備運用において、作業環境の安全確保や排熱処理、CO2濃度などの空気質管理を優先するため、始業から終業まで全台を常時稼働させる「一律運転」が常態化しているケースは少なくありません。
「FieldMagic(フィールドマジック)」はLoRa無線を活用し、大規模な配線工事を行うことなく換気扇の自動制御を実現。電力使用量の削減と管理業務の効率化を達成した取り組みです。

背景と課題 – 点在する設備の「一律運転」
対象となる工場では、数百メートルに及ぶ建屋内に換気扇が点在していましたが、以下の理由から効率的な運用が難しい状況でした。
温度ムラへの対応の難しさ
加工工程の発熱や外気の影響により、エリアごとに温度差が激しい環境でした。しかし、場所ごとの個別操作は管理担当者の負担が大きく、安全策として「全台常時運転」を選択せざるを得ない状況が続いていました。
既存設備への配線制約
集中制御システムの導入を検討したものの、広い工場内に通信線を張り巡らせるには多額の工事費用と工期を要するため、有線によるネットワーク構築は断念していました。
既存盤への「後付け」無線化
課題に対し、長距離通信に優れたLoRa無線を有する「FieldMagic」で、既存設備を活かした自動制御システムを構築します。

大規模工事不要の無線ネットワーク
換気扇そのものは交換せず、既存の操作盤内に無線制御ユニットを後付けする手法を採用しました。温度センサーのデータを親機が集約し、設定した閾値を超えたエリアのみ無線信号で動作させる構成です。建屋を縦断する配線工事を回避し、設備の稼働停止時間を最小限に抑えます。
安全を優先した制御ロジック
単なる温度連動ではなく、モーター保護と安全性を考慮した制御ロジックを実装できます。
ヒステリシス制御(不感帯設定)
「30℃でON、26℃まで下がったらOFF」といった幅を持たせた設定を行い、境界値付近での頻繁な発停(チャタリング)による故障リスクを対策をしています。
現場操作の優先(インターロック)
メンテナンス時などの安全を確保するため、現場の手動スイッチ操作を優先し、無線制御を無効化する回路構成としています。

CO2センサーによる「空気質管理」
FieldMagicは、センサーを切り替えることで「CO2濃度」に基づいた制御も可能です。
排熱よりも「密閉空間の空気質」が課題となる現場(食品工場や物流倉庫など)においては、温度センサーの代わりにCO2センサーを設置します。「CO2濃度 1,000ppm以上で換気ON」といった制御を行うことで、労働安全衛生法に基づく空気環境の維持や、感染症対策としての換気管理をセンサー連動で自動化できます。
導入により期待される「経営・現場」へのメリット
システム稼働後は、エリアごとの温度状況に基づいた自動制御により、過剰な換気を抑えられ、電力消費の削減を実現します。 また、中央監視画面にて工場内の温度がヒートマップに可視化されることで、熱がたまりやすい場所を把握しやすくなります。
運用面においては、従来必要だった退勤時の巡回確認が不要となり、管理担当者の工数が低減。数値に基づいた環境管理体制へと移行し、省エネと快適な作業環境の両立を可能にします。
FieldMagic(フィールドマジック)の製品詳細は以下よりご覧ください。

10km圏内の設備を無線で遠隔制御 – FieldMagic(フィールドマジック)
PLCや上位PC不要で設備を遠隔から操作・スケジュール設定。LoRa無線の遠隔設備制御システムFieldMagic(フィールドマジック)


