制御盤のダウンサイジング設計:遅延タイマーをソフトウェアで置き換える

FieldMagic

工場や倉庫の朝の立ち上げ時や、停電からの復旧時において、課題となりやすいのが「突入電流」です。例えば、数百台ある天井照明(高天井LED等)や、複数台の大型空調機を一斉にオンにすると、大きな電流が瞬間的に流れ、主幹ブレーカーの遮断や電圧低下を引き起こすことがあります。

これを防ぐために、設備をグループ分けして数秒ずつずらして起動する「順次起動(遅延投入)」は、以前から一般的な対策として行われています。しかし、これを従来のハードウェア(タイマーリレー)だけで構成すると、以下のような課題が出てきます。

  • 盤内スペースの不足: 照明の系統数や空調機の台数分だけ物理タイマーが必要となり、DINレールのスペースを圧迫する。盤のサイズアップが必要になることもある。
  • 回路の複雑化: タイマー間の配線や接点が増え、盤内配線が複雑になる。これに伴い、製作時の工数や、将来的な改造時の難易度が上がる。

本記事では、対象設備が増えるほど膨らみやすいこれらのコストや手間に対し、LoRa無線を用いたIoTシステム「FieldMagic(フィールドマジック)」を活用して、遅延タイマーの機能を「ソフトウェア」に置き換えるアプローチを解説します。

物理タイマーによる構成の課題

「照明グループAが点灯したら、5秒後にグループB、さらに5秒後にグループC…」といった単純なシーケンスであっても、これをハードウェアで組む場合、対象となる設備の数に比例して物理的なタイマーリレーの数が増加します。

特に、後から設備が増設されたり、LED化で系統数が増えたりした場合、既存の制御盤内にタイマーを追加する余地がなく、盤ごとの交換や補助盤の設置が必要になるケースがあります。また、リレー配線が複雑化することで、図面と現物の照合が難しくなることもあります。


FieldMagicによる省スペース化

FieldMagicでは、これまで物理タイマーが行っていた「信号を受けてから一定時間待って出力する」という処理を、ソフトウェア上で実行します。

盤内配線のスリム化と、無線の選択肢

物理タイマーを減らすことは、盤内の配線を減らすことに直結します。シンプルなI/O(入出力)配線だけで済むため、製作コストや部材コストの適正化に貢献します。

また、FieldMagicは920MHz帯LoRa無線に対応しています。基本は有線接続であっても、例えば「増設した倉庫の照明」や「離れた建屋の空調」など、信号線の敷設工事(配管埋設や高所作業)が高額になる箇所に対してのみ、無線接続を選択するといった使い方も選択することが可能になります。


遅延処理の構成

遅延の設定はブラウザ上の管理画面で行います。Node-REDベースの画面では、以下のようなイメージで順次起動の流れを構築します。

照明制御の点灯・消灯フロー例

  1. 「全点灯・全消灯」ボタンのトリガー
  2. 照明エリアA 起動
  3. Delay(5秒待機)
  4. 照明エリアB 起動
  5. Delay(5秒待機)
  6. 照明エリアC 起動

ノードで時間差をつける設定をおこない、数十台ある空調機や広範囲の照明を、突入電流が重ならないようにスムーズに立ち上げることが可能です。

※出力を既存回路へ取り込む際は、電源仕様、自己保持、インターロック、非常停止などを踏まえた適切な盤設計が必要です。


最小限のハードウェアで制御盤の小型化を

物理タイマーをソフトウェアに置き換える最大のメリットは、制御盤のダウンサイジングにあります。盤自体を小型化できれば、狭いスペースや既存設備の隙間など、設置場所の制約を受けにくくなります。それだけでなく、筐体サイズ、部材、配線工数のすべてを圧縮できるため、コストの適正化にもなります。複雑な配線を排したシンプルな盤内構成は、メンテナンス性を高め、トラブルの要因を減らすことにもつながります。

FieldMagic(フィールドマジック)の製品詳細は以下よりご覧ください。

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